引っ越しのマナー
どんなにキレイに住んではいても、生活していれば必ず、室内のあちこちに汚れや傷みが出てくるものです。
賃貸住宅の基本的な考え方として、通常の生活によって発生する経年劣化や傷みを修復する費用は家主にあります。
つまり、ごく普通に使っていれば敷金は全額返還されるべきと考えられます。
しかし、たとえば子どもがシールをベタベタ貼ったり、ペットが床を走り回って傷を付けたり、バスルームやキッチン周りにカビが大量発生したりなど、あきらかに手入れ不足や注意不足で汚したり傷を付けた場合には、修復費用は借り手が持たなくてはなりません。
じつは、これは家主持ち、これは借り手持ちという明確な線引きはありません。そのため、退去時に敷金がどれだけ戻ってくるかは家主の気分次第、そのときの雰囲気次第になってしまいます。
しかし、裏を返せばこのアバウトさは「大事に使っていると感心させれば敷金がガッポリ戻ってくる」ことにもなるわけです。
“立つ鳥跡を濁さず”などというコトワザがありますが、どうせ出ていくんだからと手を抜かずに、自分でできる部分をしっかり掃除してから家主のチェックを受けましょう。それが引っ越しのマナーというものです。
敷金がたっぷり返ってくる!クリーニングのコツ
住民が普通に生活していくうえで自然に劣化していく部分は、通常想定される傷みの範囲内なら借り主が修復費用を払う必要はありません。たとえば、壁紙の自然変色や家具があった場所となかった場所の色の差、畳の色あせ、床のうち住人がよく歩く部分と歩いていない部分とのツヤの差、などです。
このような部分は、次の借り主を探す際に壁紙や畳表を貼り替えたり、専門業者が業務用のクリーナーで磨いたりすることが多いため、必死にキレイにしても実りがありません。ちょっとでもキレイにしようと壁紙を自分で貼り替えたりする人もいるそうですが、これは何もしないより印象が悪くなります。
引っ越し先の家で使わないからと、エアコンや電化製品、家具を残していくのも同様にマイナス査定の対象。本人は親切のつもりでも、家主側にとっては迷惑な話です。電化製品や家具はインターネットオークションで売ったりリサイクルショップに引き取ってもらったりして、部屋は「借りたときに可能な限り近い状況(原状復帰)」にしておきましょう。
逆に言えば、業者が清掃しそうな部分はそれなりの掃除で抑えておき、それ以外の部分を重点的に掃除するのが正解ということになります。きちんと掃除することで印象がよくなる部分とは、バスルームのひどいカビ、トイレの陶器部分の黒い汚れ、キッチンのニオイ、柱や備え付け家具のキズと落書き、床の凹みやこびり付き汚れなどです。また、余裕があれば玄関やベランダをしっかり掃除しておき、庭がある場合は目立つ雑草を抜いておいたりすると印象がとてもよくなります。
場所別!手軽にできて見栄えがよくなる掃除術!
天井や壁の掃除
広い面は、普段から掃除をしていても全体にくすんできます。まずはホコリ落としから始めましょう。掃除機のノズルを長く伸ばし、ホコリを吸い取りながら払う方法がもっとも効果的ですが、脚立などを用意して部屋の天井から壁、床の順で「上から下へ」ホコリをはたき落としてもいいでしょう。
続いて、家庭用の中性洗剤を薄め、固く絞った雑巾でこすりながら汚れを落としていきます。よほど汚れている部分以外は、これだけでそれなりに落ちてくれます。天井はムラなく汚れているはずなので、無理に拭かない方が汚れは目立たないかもしれません。タバコのヤニなどガンコなこびり付き汚れの場合、引っ越し前の応急処置は難しいので別の項目で解説します。
フロアの掃除
床の掃除も、基本は床用の洗剤を使っての雑巾拭きです。ただ、床の種類に合わせた効果的なお掃除術も採り入れていきましょう。
フローリング床は、基本的に家庭用洗剤と雑巾拭きで十分です。ただし、ニス仕上げのフローリングが一部だけ白っぽくなっている場合には、柔らかい布か脱脂綿にアルコールを付けて軽くこすると、色の段差が目立たなくなります。
畳の床は、薄めた中性洗剤を使い、雑巾を強く絞ってから畳の目に沿って拭きましょう。畳のヘリが汚れている場合も中性洗剤で落とせます。厳禁なのは、汚れが気になるからとビショビショに濡らしてしまうこと。シミができやすいですし、場合によってはあとから臭ったりします。
クッションフロアやリノリウム床などは水気に強いので、床用洗剤でゴシゴシ拭いてしまって大丈夫です。歩行の繰り返しで汚れが黒くこびり付いている場所は、ちょっと強力なアルカリ性洗剤を使って汚れを浮かすと取れやすくなります。また、キッチンの床など油汚れがビッチリこびり付いている部分は、目の細かい液体クレンザーを柔らかい布に付け、軽くこすっていくと落ちることが多いです。ただし、狭い範囲だけをこするとムラになりがち。広い範囲を一度に拭いていくのがコツです。
キッチンの掃除
キッチン掃除は、油汚れ落とし→磨き上げの順に行います。まずは食器類をすべて片づけ、シンク下の荷物なども取り出して整理しましょう。シンク下が乱雑だとニオイやゴキブリの発生源になりますから、引っ越し前の片づけを機会にキッチリ掃除をするべきです。
シンク回りの掃除は、まずガンコな油汚れ用の洗剤で拭き掃除を。油と汚れが固まってこびり付いている場合には、汚れた部分に厚手の布を置き、熱湯をかけて融かす手もあります。ただし、火傷には充分注意してください。
シンク表面の曇りは、普段のお掃除と同様に液体クレンザーや重曹で拭くだけで構いません。蛇口など細かい部分は、クリーナーを吹き付けたあと、ていねいに布でこすりますが、細かい部分は洗剤を付けたまま歯ブラシなどでこすると作業が早いです。重曹には消臭効果もありますのでぜひお試しを。
トイレの掃除
いちばん印象が悪いのは、便器のフチや水が溜まる部分の水面線、手洗い部分などに発生する黒い汚れです。サボったリングなどと命名したケミカルメーカーもあるように、定期的に掃除していれば落としておける汚れだからです。
トイレ用洗剤の原液をかけてこすれば落ちることは落ちますが、あまりにもサボっていると、有機物の結晶が固着してザラザラに固まっていることもあります。ここまで酷い場合は、サンドペーパーやクレンザーでゴシゴシ削ってしまうしかありません。水タンクの手洗い部分など、素材がプラスチックの場合はこの手は使えませんので、トイレ用の漂白剤などケミカルの力で黒ずみを消すしかありません。
黒ずみなど目立つ部分がキレイになったら、液体クレンザーなどでパイプ類を拭いておくと見違えるようにピカピカになります。ただし、クレンザーを水タンク内に入れないようにご注意を。
バスルームの掃除
バスルームでいちばん困るのはカビの大量発生です。引っ越し前の忙しい最中に根こそぎ取ろうとしても無理なので、カビ取り剤をたっぷり使い、とりあえずは黒ずみだけでも落としておきましょう。
バスタブの汚れやザラ付きは、普段の掃除をさぼったことの証明です。風呂用洗剤や風呂用漂白剤を汚れにたっぷり吹きかけ、表面にラップを貼って1時間ほど放置すると、ガンコな汚れも落ちやすくなります。ただし、ケミカルを使えない材質のバスタブもありますので、ケミカルの注意書きをよく読んでください。どうしても取れないザラザラ汚れの場合は、液体クレンザーで削り落とすという最終手段があります。
困った!こんな場所はどうするの?
家具をどけたら壁や床にカビや黒ずみががビッシリ!
カビや黒ずみは、中性洗剤で拭いた程度ではなかなか落ちません。カビ汚れを落とすケミカルや、塩素系の漂白剤を薄めた液を布に付け、カビや黒ずみに染み込ませるようにすると、とりあえずは汚れが目立たなくなります。
ただし、白木などに漂白剤がつくと跡が残ってしまうので、掃除したい部分以外をビニールとクラフトテープでマスキングしておき、ケミカルを飛び散らせないよう慎重に作業しましょう。なお、漂白剤やカビ取り剤は必ず単独で使うこと。
ケミカルを混ぜて使うと有毒ガスが発生し、生命を落とすことがあります!
子どもがクレヨンや油性マジックで落書きしてしまった!
クレヨンの成分は、ほとんどが油脂類です。油脂は熱を加えると柔らかくなる性質がありますから、落書きの上に布を当て、低温に設定したアイロンを当ててじっくり過熱すると、融けた色素が布に移ってくれます。仕上げは中性洗剤+雑巾拭きで。これでうまく落ちない場合は、ティッシュにサラダ油を染み込ませて落書き部分に貼り付け、汚れをふやかせてからこするとすぐ取れます。
油性マジックの落書きはなかなかの難問です。油分が揮発することで色素がしっかりこびり付いてしまうので、生半可なことでは落ちません。除光液やベンジンなどの有機溶剤を布に染み込ませ、落書きを浮かせてから叩くように拭き取る方法が効果的ですが、場所によっては目立つシミができたりします。最初は中性洗剤と液体クレンザーで軽くこすって様子見を。それでダメなら消毒用アルコールや甲類焼酎で浮かせ拭きを、と、弱いケミカルから順に試していくのが無難です。
家具を置いた部分の畳がボッコリ凹んでしまった!
厳密な話をすると、これは生活していくうえで自然にできてしまう凹みですから、借り手が修復費用を負担する必要はありません。しかし、そうはいっても使い方が乱暴だったかどうかの印象には関わってくるので、引っ越し前に少しでも修復しておくべきでしょう。
フローリングやリノリウムの床が凹んでしまった場合にはどうしようもありません。フローリングは、ヘコミの中心に小さな穴を開けておくと湿気を吸って膨らんでくるという裏ワザもありますが、効果が不確定なうえに引っ越し前の応急処置にはなりません。
クッションフロアの場合は、凹み部分にドライヤーを当てて根気よく観察していると、凹みがスーッと戻ってくることがあります。畳の場合は、凹んだ部分に絞った濡れタオルを置き、スチームアイロンでシューッと蒸せば凹みが目立たなくなります。
柱や床に目立つ傷を付けてしまった!
何かをぶつけてついた軽い傷や凹みは、絞った布を凹みに当ててからスチームアイロンで蒸すと目立たなくなることが多いです。
ざっくりと切ったり何かを突き刺したりしたキズの場合は、ホームセンターなどで柱用、壁用、床用などの充填修復材を手に入れ、急がずていねいに補修作業を行うのがベター。とくにポスターなどを貼る画ビョウのような細い刺し傷は、充填剤を注入した後に表面をしっかり拭くとほとんど目立たなくなります。
充填剤修理のコツは、1にも2にも付けすぎないこと。チューブからそのまま注入するのではなく、細いヘラや爪楊枝の先にチョコッと付け、キズではない部分に広がらないように埋めないと、あとからかえって目立つことになります。
ここで爪楊枝の裏ワザをひとつ。木の柱などにクギを打ってしまった場合、クギを抜いた後に爪楊枝や割り箸を差し込み、入りきらない部分をカットして磨いてから補修用の塗料を塗ると目立たなくなります。また、フローリングの細かいキズの場合は、フロアの色に合わせたクレヨンのような修復材がありますので、目立つ部分をチョイチョイとケアしておくと予想以上にキレイになります。
粘着タイプのフックや子どものシールをはがした跡が汚い!
無理に剥がそうとすると、シールのノリが残ったり、壁紙や塗装の表面がはげたりします。
剥がす前に、酢を染み込ませたティッシュを接着部分にかぶせて接着剤を柔らかくし、軽く引っ張りながらナイフやシールはがし工具(スクレーパー)でゆっくり剥がしていけばキレイに取れます。接着剤が残ってしまったら、アルコールやベンジン、除光液で拭けばキレイになります。
電灯のスイッチ周辺が手あかで汚い!
中性洗剤で拭き掃除してもいいのですが、黒ずんだ汚れはなかなか落ちません。
こういう部分は、消しゴムでこすればキレイになります。
タバコのヤニ汚れが部屋いちめんにべっとり!
タバコのヤニは、素人がもっとも落としにくい汚れと言われています。壁や天候など広い面に均一に付着しているため、一見簡単に落とせるように見えますが、いざ洗剤などで落とし始めるとビックリするほどの拭きムラが発生。どうにも手の施しようがなくなります。汚れがあまり酷くない場合は、引っ越しだからと頑張って掃除せず、そのまま引き渡してしまったほうがいいかもしれません。
あきらかに変色が分かるレベルのヤニ汚れは、まず壁と床の境い目に布などを置き、家庭用の洗剤を染み込ませた布で壁を濡らすようにしながら、ヤニを上から下へこすり流します。ヤニは水溶性の汚れですので、これで大部分は落ちてくれます。しかし、壁紙の目地や小さな凸凹に入り込んでしまったヤニはなかなか取れません。薄めた洗剤水を霧吹きでシュッシュと吹きかけながら、根気よく落とすしかありません。
タバコやペットのニオイが強烈!
タバコ臭やペット臭が消臭しにくいのは、ニオイの成分が家中のあらゆる部分に付着しているためです。掃除をすればだいぶ収まりますし、ニオイの多くはベッドやカーテンなどの布製品に染み込んでいますので、消臭なり洗濯なりを心掛ければ薄れては来ます。しかし、細部に入り込んだ汚れは取れませんから、引っ越し前の短期間での消臭は難しいのです。面倒ではありますが、引っ越しのかなり前からていねいに消臭スプレー併用で掃除をしていくしかありません。
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